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我々に自由意志はあるのか?ということについて科学的な観点から考える

[2023.05.22]

自由意志とは、自分自身の意図や選択に基づいて行動する能力を指します。

自由意志が存在するためには、人間の行動や意思決定が因果律や物理的な法則から逸脱している必要があります。独立不変の意思が我々個人に存在するのかという問題です。

自由意志があると仮定すると、個人の行動や選択に対して倫理的・法的な責任を追求することが可能になります。法律に抵触する行為を犯した場合、法の裁きを受けるのは必然のこととなります。一方で、自由意志が制約されていると考える立場では、責任に対する考え方も変わる可能性があります。

現代の物理学、脳科学、心理学などの科学的な観点からこの問題はどう捉えられているのでしょうか?

物理学の法則に基づけば、物理的な要因と原因-結果の関係によって、人間の行動や意思決定は予測可能なものとされます。<物理的決定論>

脳科学の実験では、脳活動が行動の数秒前から観察されることが示されています。つまり、行動が意識的に選択される前に、脳の活動パターンがすでに存在していることがあるのです。このような結果から、自由意志が完全に自律的なプロセスによって決定されるのか、脳の活動によって制約されるのかは、明確ではないと言えます。また、脳の神経細胞間の相互作用や神経伝達物質の働きが意識や行動に大きな影響を及ぼしていることが示されています。脳の活動は物理的なプロセスに従い、生物学的な制約を受けます。このような制約下で行動が生じるため、自由な意思決定は困難であると主張されます。<脳の制約>

脳科学の観点では、脳の活動は物理的・生物学的な法則に従って起こると考えられています。脳内の神経細胞間の電気信号や神経伝達物質の流れは、原因と結果の関係に基づいており、因果律によって制約されます。したがって、人間の行動もこの因果律に従っていると考えられます。<脳活動の因果律>

人間の行動や意思決定は、遺伝子や環境の要素によっても影響を受けます。遺伝的な要素は脳の構造や機能に影響を及ぼし、環境要因は行動に影響を与えます。これらの要素によって行動が制約されるため、自由意志は完全に存在するとは言い難いとされます。<環境と遺伝の影響>

また、心理学の研究では、人間の行動や意思決定には無意識の影響があることが示唆されています。無意識の心理的プロセスや刺激が行動を形成する際に重要な役割を果たすことがあります。このような無意識の影響が存在する限り、自由意志は完全に主導するものではないと主張されます。<無意識の影響>

以上のことから、人間の行動や意思決定は、複雑な要素の相互作用や制約の結果として生じると考えるのが現時点での科学的観点の主流ということになりそうです。

つまり私たちが感じる自由な意思決定や行動も、実際には脳の活動やその他の要素によって決定されている可能性が高いと考えられます。

そうすると、自由意志は一種の幻想と考えることが妥当のようにみえてきます。私たちが自由な選択をしているように感じるのは、実際には複雑な神経回路や脳の活動パターンによって制約された結果であると考えられます。意識的に意思決定を行う際には、脳内の情報処理や判断プロセスが活発に行われますが、それらのプロセスも物理的な法則や神経活動に従っているとされます。

そして、自由意志がないとすれば、個人の行動の動機づけが問題になりますが、以下のような観点を考えることは重要です。

  1. 人々は幸福や満足を追求することができます。心理学や幸福学の観点からは、個人の基本的なニーズや幸福の要素を追求し、充実感や喜びを得ることが生きる意味の一つとされます。
  2. また、倫理的な価値や道徳的な原則に基づいた行動を通じて、他者への配慮や善行を実現することが生きる意味の一つとなります。個人が他者との関係を構築し、社会的な価値を実現することに意味を見出すことができます。
  3. 個人は自己の成長や能力の発展を追求することができます。自己の潜在能力を最大限に引き出し、個人的な成果や充実感を得ることを生きる意味の一つとする観点です。
  4. 人間の存在は、宇宙や生態系の一部として独自の貢献や役割を果たすことで、意味や価値を持つと考えられます。

 

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