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ギャンブル依存症(病的賭博・ギャンブル障害)を理解し、克服への道を探る

[2024.03.26]

 

1. ギャンブルと娯楽の境界

ギャンブルは多くの人々にとって楽しい娯楽の一つです。ギャンブル行為は「不確実性を伴う報酬」による一時的な高揚感や逃避を提供します。しかし、無害な娯楽として楽しむべきものが、深刻な問題に発展することがあります。ギャンブル行為が自己制御できなくなり、生活の中心となってしまう場合、それはもはや単なる娯楽ではなく、依存症へと変わります。

2. ギャンブル依存症とは何か

ギャンブル依存症は、DSM-5では「ギャンブル障害」、WHOの国際疾病分類(ICD-10)では「病的賭博」として分類されています。これは、単なる悪習や意志の弱さではなく、脳内の生理学的な変化に基づく疾患です。ギャンブルが家族関係、仕事、財政状態に重大な影響を与え始め、自己制御ができなくなったとき、それは治療を必要とする障害とみなされます。

3. ドパミンとギャンブル依存症の関係

ギャンブル依存症の背景には、脳内の報酬系と呼ばれるシステムの働きがあります。特にドパミンという神経伝達物質がギャンブル依存症に深く関与しています。ギャンブル行為は、勝ち負けに関わらず、強い興奮や快感を引き起こします。これは、ギャンブルによって脳内で大量のドパミンが放出されるためです。この過剰なドパミン放出が、ギャンブル行為への強い渇望や依存を引き起こし、繰り返しギャンブルに手を出す原因となります。

4. 報酬系の構造と依存のメカニズム

脳の報酬系は、いくつかの主要な領域から成り立っています。中でもヴェントラル・テグメンタル・エリア(VTA)核際膜(NAc)、そして前頭前野(PFC)が重要な役割を果たします。VTAからNAcにドパミンが放出されることで、報酬に対する期待や快感が生まれ、PFCは意思決定や衝動制御を担当します。ギャンブル依存症では、PFCの機能が低下し、衝動をコントロールする力が弱まることがあります。

長期的にギャンブルを続けると、脳の構造自体に変化が生じることが研究で明らかになっています。特に、ドパミン受容体の感受性が変化したり、グレイマター(脳細胞の体)の量が減少したりすることがあります。これらの変化が、依存症行動を維持し、回復を難しくする要因となります。

5. ギャンブル依存症の治療アプローチ

ギャンブル依存症の治療は、以下の3つの方法を基に行われます。

① 刺激-報酬系のパスウェイを回避する方法

ギャンブル依存に関連する報酬系のパスウェイを避け、依存症を引き起こす刺激を減らす方法です。これはトリガーとなる状況や環境を認識し、避けることに重点を置いています。

② 刺激-報酬系の別のパスウェイを用意する方法

ギャンブル以外の報酬を提供する活動を取り入れることで、脳の報酬系を他の行動に置き換えます。新しい趣味や健康的な活動を通じて、依存行動を減らすことが目指されます。

③ 肥大化したパスウェイを細くする方法

依存症の治療に最もよく使われる方法がこれです。認知行動療法(CBT)によって、ギャンブルに関連する考え方や行動を修正し、依存に繋がるパスウェイを弱めるアプローチです。

当クリニックでは、主に③のアプローチを中心に治療を進めます。

6. 認知行動療法(CBT)と薬物療法

認知行動療法(CBT)は、ギャンブル依存症の根底にある思考や信念を特定し、それらを「認知の歪み」として修正することを目的とします。CBTは、ギャンブルに関連する誤った信念や行動パターンを変え、問題解決技術を教えることで、衝動的なギャンブル行為を減らすのに役立ちます。

薬物療法については、ギャンブル依存症そのものに対する特定の薬は存在しませんが、抗うつ薬や抗不安薬が症状の管理に使われることがあります。また、ドパミンの活動に影響を与える薬が、衝動制御に役立つこともあります。

7. 再発予防と回復サポート

ギャンブル依存症の治療は一夜にして成功するものではなく、長期的な取り組みが必要です。再発のリスクは高く、トリガーとなる状況や感情を特定し、適切に管理することが重要です。再発予防には、ストレス対処法の習得健康的なライフスタイルの維持、そして学んだスキルを日常生活に適用することが含まれます。

治療中のフォローアップやカウンセリングの継続も、回復の維持に不可欠です。当クリニックでは、再発防止に向けたサポートと技術を提供しています。

8. 助けを求めることの重要性

ギャンブル依存症は、ご本人および関係者にとって重大な挑戦ですが、適切な支援、理解、そして治療によって依存症からの回復は可能です。大切なのは、助けを求めることです。もし自分自身や大切な人がギャンブル依存症に苦しんでいる場合、専門的なサポートを受けることを恐れないでください。希望は常にあり、回復への第一歩を踏み出すための助けが存在します。お困りの方は気持ちを楽にして一度ご相談ください。<初めてご利用される方へ

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