愛着障害(アタッチメント障害)の治療:心の傷をケアする方法
はじめに
幼少期における親(主たる養育者)との関係は、私たちの人格形成に深く関わります。そして愛着(アタッチメント)の問題は、大人になっても人間関係や自己評価に影響を及ぼし、対人不安や生きづらさの原因となることがあります。 昨今SNS界隈では「親ガチャ」「毒親」などという言葉が広まり、自分の生い立ちの不遇さや親との関係に悩む人が増えています。
「親ガチャ」という言葉が示すように、どのような親のもとに
「毒親」と言われる養育者との関係性の中で育った方は、
本記事では、愛着障害に悩む方へ向けて、メンタルケアの方法や治療の選択肢について、お伝えします。
1. 愛着障害(アタッチメント障害)とは?
愛着(アタッチメント)は幼少期に親や養育者との間で形成され、対人関係の基本的な様式を表します。
● 愛着パターン
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安定(自律)型:絆が安定しており、自分を愛してくれる人がいつまでも愛してくれると当然のように信頼しています。気軽に助けを求めたり、相談できます。人の反応を肯定的に捉え、うがった見方をしたり誤解することがありません。
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回避型:親に頼ることができず、他人と深い関係を築くのが難しいタイプです。親密さを回避し、距離をおいた対人関係を好みます。回避型にとって最も重要視するのは、「縛られないこと」。自立自存を最良として、人に迷惑をかけることを避けて、自己責任を重んじます。
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不安(アンビバレント)型:相手の気持ちが気になりすぎて、対人関係で強い不安を感じるタイプです。常に周囲に気を使い、機嫌をうかがったり、迎合したり、不当な要求にも従ってしまうことがあります。少しでも相手が拒絶的な反応を示すと、激しい不安に襲われ、それを容易に払拭できません。
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混乱(無秩序)型:愛情と恐怖が入り混じり、対人関係が不安定になるタイプです。回避型と不安型が錯綜してとても不安定なものになりがちです。虐待や著しく不安定な親の場合に生じやすいとされます。
愛着障害は、幼少期に親や養育者との間で適切な愛着を形成できなかったことにより、人間関係や感情調整に困難を抱える問題で、以下の2つのタイプがあります。
● 愛着障害のタイプ
①反応性愛着障害(RAD)
・社会的関わりを避ける
・感情表現が乏しく、慰めを求めない
・養育者に対して無関心
②脱抑制型対人交流障害(DSED)
・見知らぬ人にも警戒なく接近
・過度の親密さを示す
・境界線の認識が弱い
2. 愛着障害が引き起こす心理的影響(大人になって現れる症状)
愛着の問題は、人間関係や自己評価、ストレス耐性に影響を与えています。幼少期に心理的・感情的な虐待や操作、過干渉、無視などを経験し
⚫︎ 親密な関係を構築することに困難さを感じ、深い関係を恐れる、または過度に依存
⚫︎ 感情調整の問題があって、怒りの爆発や感情の麻痺など、極端な感
⚫︎ 見捨てられ不安から、些細なことで拒絶されたと感じ、過剰に
⚫︎ 自己肯定感の低さが常にあり、自分には愛される価値がないという根
⚫︎ 対人関係のパターンが決まっており、同じような不健全な関係性を繰り返してしまう。
⚫︎ 心身の不調が慢性的にあり、不安障害、うつ症状、慢性的な身体症状の発
⚫︎ 仕事や社会生活への支障を感じやすく、上司や同僚との関係構築の困難
もしあなたが、これらの症状や悩みを長い間抱えていて、改善する兆しがない場合は、その背景に愛着の問題が隠れている可能性があるかもしれません。
3.愛着障害は放置しておくと自然に治るのか?
残念ながら、愛着障害は時間が経つだけでは自然に改善することは
● 不健全な関係パターンが固定化される。
● 依存症や自己破壊的行動によって問題が複雑化する。
● うつ病や不安障害などの二次的な精神疾患を発症する可能性が高ま
● 次世代に同様のパターンが継承される「世代間連鎖」のリスクがある。
4. 愛着障害に対するメンタルケア
幼少期に愛着の問題があっても、大人になってからの適切なケアで改善できます。早期に
1. 自己理解が深まり、行動パターンを変える力が身につく。
2. 健全な境界線の設定方法を学び、より対等な関係を構築できるよう
3. 感情調整のスキルが向上し、安定した精神状態を維持できる。
4. 自己肯定感が高まり、自分を大切にする態度が身につく。
5. 過去の傷つき体験やトラウマを統合し、未来に向けて進む力を得られる。
5. 愛着障害に効果的なメンタルケアの方法
愛着障害による生きづらさは、過去の環境によって生まれたものです。適切な治療やケアを受けることで、安心できる人間関係を築き、自己肯定感を取り戻すことが可能です。また愛着の問題は「心のクセ」として深く根付いていることが多いため、まずは心理専門家のサポートを受けて自己理解を深めていくことが有効です。
● 専門家によるメンタルケア
①スキーマ療法
心の深い部分の傷つきや生きづらさに働きかける心理療法です。
②フォーカシングアプローチ
心と体の反応に注目して、こころの求めに気づき、理解する心理療法です。
③認知行動療法(CBT)
自分の考え方や行動パターンを見直す方法です。
④薬物療法
不安やうつ症状が強い場合、一時的に適切な薬を使うことが適切な場合があります。
● 日常でできるセルフケア
① 自分の感情を客観的に見つめる
「私は今、不安を感じている」と気づくだけでも、心が落ち着きます。
② 安心できる人間関係を作る
信頼できる人と少しずつ関係を深めることで、安全な愛着を学ぶことができます。
③ インナーチャイルドを癒す
過去の自分(インナーチャイルド)に寄り添うワークも有効です。
6. 当クリニックのサポート体制
ココラク・クリニックでは、愛着の問題に悩む方が「自分らしい人生」を取り戻すための専門的なサポートを提供しています。精神科医、公認心理師、臨床心理士が連携し、ひとりひとりの状況に合わせて治療法を組み合わせながら、段階的な回復を丁寧に支援していきます。
心的防衛機制の作用によって「傷ついた心」に蓋をして、無かったことにしてしまっている「心の傷」を、安心できる環境の中で、少しずつ解きほぐし、癒しに導くメンタルケアを行います。過去の経験や出来事を変えることはできませんが、その経験とどう向き合い、今後の人生をどう築いていくかは変えることができます。
適切なサポートと自己理解を深めることで、これまでとは異なる新しい対人関係のパターンを築き、より豊かで満たされた人生を送ることが可能です。
もし、今あなたが愛着の問題で悩んでいるのなら、専門的なサポートを受けることが、回復への第一歩です。まずは、オンラインによる<診療前相談>を心楽にご利用ください。あなたの状態に合わせた最適な治療プランをご提案させていただきます。
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